ペット 「プロローグ」 - KREY FACTORY

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「プロローグ」 

Heartの小説版です。セルフノベライズ的なものだと解釈して下さい。

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【諸注意】小説を書く上で必要な心構え等を熟知しているわけではないので、ご了承下さい。
     セルフノベライズという性格上、ゲーム版と描写が違う点があります。
     
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2012/2/14
「もう、放っておいてくれ!」
そう言い放った後、どうなったのか思い出せない。
何も考えられないまま、気がつけば街を飛び出していた。
戻ることは考えられず。ただ、どこかに向かって宛もなく走っていた。

それから、どれくらいたったのだろうか。
視界は狭くぼやけて、ほとんど視えていない。
わかるのは、今いるのは街からかなり離れた森林地帯のまっただ中で、この場所は、その森の中で何かしらの要因で偶然できあがった少し広けた場所だということくらいだ。
その広場の真ん中に、まるでこの場の主であるかのようにそびえる太く大きな一本の木。
蒼い髪の少年。レイルは、その幹に背中を預けるようにして座り、ぼんやりと「どうしてこんなことになってしまったのか。」と、ここまでの数日間を思い返していた。
体は、自分の物ではなくなったかのように重く、思うように動けない。
命に関わる傷を受けたわけではないが、疲労でほとんどの感覚が失われてしまったようだ。
"それ"が起こったのは、数日前の事だった。
頭の中に直接、人の「声」が流れこんで来るようになったのだ。
俺は、自分の身に起こった異変を受け入れられず、その場で気を失った。
翌日、運び込まれた病院で目覚めた頃には収まっていたものの、「声」はそれ以来度々聞こえるようになり、その間隔は日を追うごとに短くなっていった。
誰も、自分が心のなかだけで思っていることを知られたくはないし、知りたくもない。
聞いてはいけないもの。聞きたくも無いものがひっきりなしに聞こえてくる事に怯え、俺はだんだんと壊れていった。
こんな力があると他人に知られれば、気味悪がられ、人々から避けられるようになる。
倒れた理由を不調と誤魔化していた俺は、しだいに親しい人から避けられるようになる恐怖にまで悩まされるようになっていた。
そしてついには、「いずれ誰からも嫌われてしまうのならば、いっそ自分から消えてしまおう。」という考えに行きつき、母親の形見の剣だけを持って、住み慣れた街を飛び出した。
これまでの数日、何度も、何度も「いっそ死んでしまおう」と思い。
しかし、それを選ぶわけにはいかなかった。
「――あなたには、いずれ何かを守らなければいけない時が来る。
 その時は、その人も、そして自分も救って見せなさい。あなたにならそれができる。」
10年前に俺を魔物から庇って死んだ母親の最期の言葉。
傷だらけの手で名残惜しそうに頬を撫でるその感触と言葉は、今なお鮮明に思い出すことができる。
たとえその真意が分からなくても、どれほど心を病んでも、裏切る事ができないほどに心に深く刻み込まれているのだ。
その言葉が、レイル・アルテミアという人間のこれまでを支えて来た全てといってもいい。
けれども、それも限界に近づいていた。
親しい人も生活する場所も捨て、死ぬことも選べないなら、俺は一体どうすればいいのだろう?
今、ここでこのまま過ごして体力が回復したとしても、行く宛はない。
人と関わらずに生きていくことなんてできない。が、人と関わることができないという矛盾。
けれど、ぐずぐずしていればアイツが出したギルドの捜索隊に見つかってしまうだろう。
知った顔も多いだろう捜索隊を力ずくで振り切ってまで逃げ出したいとは思えないし、消耗した体で出来そうもない。
「どう、しようか……。」
漠然としない不安だけが無限に続いていた。

しばらく考えても、やはり答えは見つからない。
だんだんと頭も働かなくなって、眠気が襲ってきていた。
こんな所で眠りにつくのは危険だが、今はそんな余裕もない。
もう一息で完全に意識を失ってしまうほど朦朧とした中、不意に誰かが近くにいるように感じた。。
なくなりかけた意識をたぐりよせるようにしてその方向へと顔を向けると、かすむ視界に人影のようなものが歩みよってきているのが映った。
幻覚、ではないだろうが、誰なのかはもうわからない。それ以上、体はいうことを聞いてくれない。
確認することはできない、がおそらく自分を探しに来た人間だろう。
もう、見つかったのか。随分と短い逃亡だったな。と諦めの言葉が心に浮んだ。
せめて最後の抵抗にとほんの少しでも体を動かそうとしていると、周囲に青い光が浮かび始めた。
突然の出来事に、もう一度集めようとしていた気力が散ってしまい、それを黙って見ていることしかできなくなる。
次々と湧きでた光はやがて一点へと集まり、彗星のような尾を引きながら何もない空中を回りはじめた。
速度を増していく軌跡は一つの円となり、その内側からは幾重にもなる図形の紋様が浮かび上がる。
青一色で統一された魔法陣の中心に浮かぶ月の模様。
魔法に関してくわしくない俺でもひと目でそれとわかるシンボル、治癒魔法の象徴だ。
陣が完成してしばらくすると、陣の内側からあふれ出した青い光が、俺の体を包み込む――。
疲労しきっていた体は嘘のように軽くなり、光が収まる頃には体中の傷が癒えていった。
かすんでいた視界も元に戻り、目の前に立っている人物の姿が鮮明に写る。

そこに立っていたのは、「蒼い」女性だった。
長く、腰のあたりまで伸ばされた髪は、俺のものよりもさらに蒼く、透き通りそうなほど澄んだ色合いで、ただよう治癒魔法の残光に照らされて神秘的に輝いている。
この地方に伝わる儀礼用とされる服は、これも全体が蒼でまとめられ、女性の神秘性をさらに増す。
美人という言葉がふさわしい、整った顔の細くつり目がちの蒼い瞳は、真っ直ぐに俺のことを捉えている。
浮世離れした雰囲気に圧倒され呆然としていた俺に、女性は、落ち着いた声で「大丈夫ですか?」尋ねてきた。
その言葉に我に返り、色々な疑問は尽きないが、とりあえず素直にお礼を言うことにする。
「疲れて動けなくなっていたんだ。助かったよ。」
「よかった。とても消耗していらしたようなので簡単な治癒魔法をかけましたが、まだ何処か痛む場所はありませんか?」
そのままとも言える俺のお礼の言葉に、女性は落ち着いた笑みを浮かべながら気遣いの言葉をかける。
どうやら彼女はギルドの関係者ではないようだ。
こんな奥地にギルド以外の人間が居ることは気になるが、ギルドに関係がない人ならばこれ以上関わる必要はないと思い直す。
助けてもらったのはありがたかったが、また「声」が聴こえる事のほうが怖いし、このままでは迷惑をかけてしまうかもしれない。
「大丈夫だ。」俺はそれだけ言って立ち上がり、この場を去ろうとする。
だが、「どこへいかれるつもりですか?」と聞かれ、踏み出そうとした足を止め、固まってしまった。
返す言葉が見つからない。俺はそのまま黙りこんでしまった。
「また宛もなく歩きまわるつもりですか?
 次はないかもしれませんよ?レイル・アルテミアさん。」
女性が口を開く。
無意識に視線が彼女の顔へと移っていた。
彼女は何かを知っている。いや、"何もかも知っている"そんな予感がした。
そして、予感の通り、女性が俺の名前を呼ぶ。
体中に緊張が走る。一瞬で様々な可能性を考慮し、同時にこの女性が何者なのか記憶を辿る。
「捜索でも頼まれたのか?」
意識を警戒に切り替えて、もう一度女性へとむき直る。
記憶の片隅になにかがひっかかり、言いようのない違和感を感じていたが、思い出せないなら覚えていないのと同じだ。
ギルドの連中に捜索を頼まれた傭兵ならまだいいが、それ以外だった場合は――。
気づかれないよう慎重に、腰に下げられた剣の柄へと手を伸ばし、女性の返答を待った。
「失礼しました。まだ名乗っていませんでしたね。
 わたしはアクア。治癒魔法の管理とこの地方一帯の生態系管理を任された賢者です。
 安心してください。あなたを街へ返しにきたわけではありません。」
俺は、より強い疑いの視線を女性へと向けた。
目の前の女性が、一国の軍隊が厳重な監視体制を敷いてなお監視すらままならない、賢者だとでもいうのか?
「おいおい、冗談……だろ?なんでアンタみたいな。それに――」
「なら、こうすればわかりますか?」
そう言うのと同時に、アクアの雰囲気が――いや、あたりの雰囲気が一変した。
殺意に狩られた魔物を相手にした時のように肌に突き刺さる、ビリビリとした威圧感。
そのあまりの迫力に気おされ、数歩後ずさってしまった。
そこにあったのは、"あの時"と同じ、人がどうあがいたても敵うことのない絶対強者の気配。そして、畏怖。
アクアの背後では、すでに4つもの魔法陣が同時に展開されていた。
魔法に関してあまり詳しくはない俺でも、それがありえないということくらいは直感で理解した。
そのどれもが先ほどの魔法陣などとは比べ物にならないほどに大きく、先ほどの魔法陣などよりもはるかに複雑だったからだ。
「これで信じていただけましたでしょうか?」
唐突に気配が緩む。
ほんの数秒であったはずのその時間は、とても長い時間に感じられた。
止まってしまっていた息を吐き出すと、一気に冷や汗が湧き出る。
その場にへたれこみそうになる体をなんとか制して、目の前に立つアクアをもう一度見据えた。
「ああ。」
ありえない。という思いがまだ残っているが、あれだけの力を見せつけられては認めるしかない。
「お分かりいただけたようでなによりです。
 あとは、『どうして名前を知っているか。』と『どうして助けたのか』というところでしょうか?」
無言で肯定を返す。なんでもお見通しだといった風だ。
「1つ目の質問は、とても簡単な理由です。わたしは"管理する地域の情報は全て把握している。"それだけです。
 2つ目は、あなたに頼みたい依頼があるから。です。」
「依頼?」
賢者ともあろうものが、一体何を人に頼む必要があるのだろうか。
まがりなりにも神の使いと呼ばれていた理由は、その全知全能さにあるはずだ。
いや、実験体とかならありえるかもしれない。
もしそうであれば絶対に断りたい所だが、逆らうのはあまりよくない気がする。と言うよりも拒否権なんて存在しないだろう。
などと勝手な想像が膨らんだものの、どうやらそんなマッドな依頼ではないようだ。
「端的に言えば、わたしの元で働いて欲しいという依頼です。
 報酬は、あなたにその力『月読』について知っている限りのことを全て教えること。」
「"これ"について知っているのか!?」
このわけの分からない力さえ無くなれば、全てと言わないまでも生きていく程度の希望は持てる。
垣間見えた希望に、つい言勢が強くなるのを抑えられなかった。
「『月読』はわたしが管理している魔法ですから。他愛もないことです。
 ――ただし、消すことはできません。『月読』は先天性の魔法です。
 先天性の魔法を消す事は命に関わってしまいます。わたしが教えるのは、制御の方法ということになります。」
消す事はできない。それだけだったなら絶望してしまうような事実だ。
だが、これを制御するの方法がわかるならば、まだ、なにか変わるかもしれない。
「依頼の主な内容は?」
「難しいことではありません。わたしの元に居付いて、この辺り一帯の監視の仕事についてもらうだけです。」
「住む場所もあるってことか?」
「ほとぼりが冷めて、その力の制御の方法がわかるまで匿ってもらえると思っていただければ。」
住む場所に加え、今自分が最も知りたい情報も付いてくるなどと、条件としては良すぎだ。
アクアにはなにか別の目的がある。ギルドにいた頃の経験がそう思わせる。
だが、自分に残された道はこれしかない。
だったら、利用されるのも悪くない。
これで全てが変わることを信じ、レイルは答えた。
「わかった。その依頼、受けよう。」
「ありがとうございます。
 ついてきてください、詳しいお話は聖域でしましょう。」
その言葉と共に返って来たのは、アクアの純粋で透き通るような笑顔だった。
俺は、思わぬ不意打ちに顔を赤くしながら目を逸らす。
やはり、記憶の中で何かが引っかかる。
大事な事を忘れているような。霞んでいるような。そんな感覚。
どちらにせよ、しばらくその笑顔は忘れられそうになかった。
2013/02/12 Tue. 21:46 | trackback: 0 | comment: 0edit

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